〜童話その1〜
【勇敢の山】

ある平和で強固な国の王が、若くて賢いと評判な、ある二人の兄弟を王族に迎えようとして、彼らを呼んで言った。

「私はお前たちを王族に迎えようと考えている。だから、勇敢の山を乗り越えて目的地にたどり着いた者にその権利を与える。ただし、勇気がないならやめなさい。勇敢の山は険しくて危険だから。」
勇敢の山は、茨の道になっていて、鎌で刈りながら少しずつ進まなければならないほど険しく、昼は暑く、夜は寒くて暗く、大きな獣たちが人に襲ってくる危険な山であった。

長男は、弟より先にたどり着いて、弟よりも多くの報酬と権威をもらおうとして、金だけ手に持って慌てて出かけた。
そして、金で奴隷と馬車を買って、山のふもとに沿って、目的地まで自分を馬車に乗せて行くように奴隷に言った。
「私はお前を金で買ったが、私が弟より先に王の元に着くことが出来れば、お前には一生分の報酬をやろう。しかし、もし遅れて後に着くことになれば、私の鎌で、茨の代わりにお前を刈るだろう。だから、死にものぐるいで馬を走らせなさい。」

次男は、山に行く準備をしっかり整えてから、自分は生きては帰れないかもしれないと思って、家族に挨拶をしてから、勇敢の山に入って行った。しかし、最初は山の険しさや空腹で力が弱った時に後悔することもあった。
「王は私たちがこの山を乗り越えられると信頼して、この山に入らせたのだろうが、私にはその力はないのかもしれない。しかし、私は王の期待に応えたい。もし力尽きたとしても最後まで諦めはしない。」
次男は険しい茨の道を、汗を流し、傷だらけになりながらも、前に進んで行った。最初は少しずつしか進んで行けなかったが、次第に鎌の使い方が上手くなり、勢いよく進んで行くようになった。
また夜には獣が来ないように火を絶やさないようにして眠った。また獣が襲ってきた時には、ある時は回避し、ある時は戦い、ある時は追い払う事が出来るようになっていった。
そして、勇敢の山を乗り越えてふもとに着く頃には、非常に勇敢で、力強く、思慮深い者になっていた。

長男は目的地に着くまで、馬車の中で居眠りしているか、奴隷を馬の鞭で叩いているかだけであった。
しかし、奴隷が馬車を急いで走らせたおかげで、次男より先に目的地が見えてきた。そこで、王に見えない所で馬車を止めて、奴隷に言った。
「奴隷よ、良くやった。どうやら私は先に着いたようだ。この馬車が見つからないように、私を降ろして行きなさい。報酬は後からたっぷり払うから楽しみにしておくがいい。」
目的地で王が待っていると、長男が先に着いた。そしてしばらくして次男が着いた。

王は言った。
「二人ともよく無事にここまでたどり着いた。まずは腹を満たして休むがよい。」
そう言って、家来にそれぞれにひとつずつパンを持って来させた。
長男は、次男が勇敢の山を乗り越え、生きてたどり着いた事を不快に思い、王が自分よりも弟に良くされるのでないかと疑って、王と次男が見ていない隙に次男のパンに毒を盛った。そして長男は王に言った、
「王よ、いつになったら報酬を頂けるのでしょうか。私が先に着いたのですから、弟より先に、私はあなたから頂けるものがあるはずです。」
王は長男が不正を働いてたどり着いた事と、次男のパンに毒を持った事を見抜いて言った。
「確かにお前が先にたどり着いた。しかし、勇敢の山を乗り越えてきた弟の身体には茨の傷跡、手には豆、鎌には刃こぼれがあるのに、お前にはそれらがないのはどうしてなのか。私はお前に確かに報酬を払おう。お前は自分のパンと弟のパンの両方を食べるがよい。」
長男は、王に自分のした行いすべてが見破られたのを悟って、目の前にある勇敢の山に逃げ走り、獣に襲われて死んだ。
そして王は次男に言った。
「勇敢な者よ、よく私の期待を信じてここまでたどり着いた。王族となって宮殿に住み、私と一緒に国の民を守りなさい。」

2018.4.18